自惚れ

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彼女は私の番になると、カウンターに置かれたトレイを引き寄せ、いつものように無駄のない動きで手早くレジを済ました。 そして、パンの包装に掛かった。 「さすが、常連さまですね。チョコリング、新作なんですよ?」 「やっぱり……」 宮田さんの言葉に私は思わず呟いた。 見たことがなかったのはやはり、今までは棚には並んでいなかったのだ。 しかし、この店で月の途中で新作が出されるのは珍しい。 「霧島さんなら気付くと思いましたよ」 「あ、いえ……。店長さんが勧めてくださったから」 今日の私はあんなにも彼の手元を見ていたにも関わらず、目の前のパンが新作だということにも気が付かなかった。 ぼんやりしていた証拠だ。
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