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「ね、橋本さんもそう思わない?」
宮田さんが橋本さんに声を掛けた。
「……何のこと?」
急に声を掛けられた彼女が宮田さんに尋ねた。
「このパン、霧島さんのイメージだなって思って」
宮田さんは包装しかけの新作のパンを彼女に見せた。
橋本さんは彼女の手の中のパンを見つめた後、視線をゆっくりと私に向けた。
その目は私の浅かった呼吸も、早まった鼓動でさえも止めそうになった。
「ホント……霧島さんみたい」
彼女は独り言のように小さく呟くと笑顔をつくった。
そして、「ごぼうパン、焼きあがりました」と掛け声を飛ばし、天板を持ってフロアに出て行った。
私は彼女の背中を目で追いつつ、宮田さんからはパンの入った袋を受け取った。
そして、視線を伏せるように会釈をして店を出た。
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