名前も知らない

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「俺じゃ……ダメかな?」 彼は半分あきらめたように小さく笑った。 「霧島さんは忘れちゃったかもしれないけど、前に言いかけたことがあって……。俺、将来はやっぱり独立して自分の事務所持ちたいんだ」 彼は私に何かを訴えかけるように話した。 「その時には、霧島さんが一緒にいてくれたら……なんて思ってたんだけど」 彼の話は私の胸の奥を思い切り締め付けた。 彼が描く未来に私が存在していたことに驚きながら、彼の気持ちの大きさと真剣さに胸を打たれる。 返事をする私にも相当な覚悟と責任が必要だった。 「平岡さんは……私にはもったいないくらい素敵な人です」 事実ではあるがこの言葉だけでは私は彼の気持ちに向き合えていない。 「そう思ってくれてるのに……ダメなの? その人と上手くいく保証なんてないのに」
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