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彼は素敵な人だ。
理想の男性像かもしれない。
周りだってうらやむほどの人だと思う。
けれど、私の口は躊躇うことも忘れていた。
「……ごめんなさい。平岡さんとはお付き合いできません」
私は拳を握りしめて頭を下げた。
「そっかぁ……」
彼はグラスを握りしめてため息をついた。
けれど、彼はどこまでも素敵な人だ。
男らしくて大人の対応を貫く。
「じゃあ、仕方ないね。プライベートでも隣にいて欲しかったんだけど」
初めて見る彼の落胆にも似た寂しそうな顔が作り笑いを懸命につくる。
「上手くやっていけると思ったんだけどな……」
彼が最後言った一言が、彼らしくない負け惜しみのようにも、泣きごとのようにも聞こえた。
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