名前も知らない

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翌日は私の心を映し出すかのような青空が広がっていた。 もうすぐ梅雨明けして本格的な夏がやってくる。 「今日は何かいいことでもあったの?」 そう言ったのは隣の席の平岡さんだ。 「いえ、そんなことないんですけど」 否定する私の顔が綻ぶ。 「……ちょっとだけ。たいしたことないんですけど」 私が言い直すと彼は「そっか」と小さく洩らし、どこか歯切れが悪いまま正面を向いた。
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