【パン屋の憂鬱】「密かな想い」

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彼女はただの……常連さん……。 俺は自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、彼女から目を逸らし、手元の生地をこねる手に思い切り力を込めた。 そして、その間に店に入ってくる新しい客に向かって 「いらっしゃいませ」 と、先程よりも大きな声で迎え入れる。 店内には数名の客がいる。 なのに、 自分に言い聞かせれば、言い聞かすほど、 俺の目は 店の中で 彼女しかとらえようとしなかった。
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