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彼女がガラスドアを開け、店を出た。
彼女は彼女の世界に戻るだけ。
カランコロンとなんだか気の抜けた音が
毎日、一回だけ訪れる、眠気も醒ます時間の終わりを告げる。
俺は小さくため息をついた。
しかし、そんな俺とは対照的な明るい笑顔がカウンターから俺に向けられる。
振り向いた宮田さんはクスクスと堪えきれないのか笑いを洩らしていた。
「霧島さん、驚いてましたよ」
霧島さんとは、彼女のことだ。
この店では既に全員が彼女の名前を知っている。
パンの予約などは必然的に客の名前と連絡先を聞くことになるからだ。
彼女は時折、昼の購入の際に食パンやロールパンを予約してくれるのだ。
店の予約表に書き込みながら、俺は彼女の名前を知ったのだ。
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