【パン屋の憂鬱】「密かな想い」

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彼女がその表情を見せてくれることは、 本当に嬉しいことだった。 けれど、今、宮田さんが話したのは俺がこのパン屋の店長としての意味合いだろう。 この仕事をしていれば、お客さんから笑顔をもらえることは学校で通信簿に一番いい評価をもらえたのと同じなのだから。 だから、 老夫婦が変わり種のあんパンを見て驚く顔も、 家族連れが家族の顔を思い浮かべながらトレイいっぱいにパンをのせていく様子も、 子供が満面の笑みでパンを頬張る姿も、 どれを見ても胸がいっぱいになる。 だけど、彼女の場合は 俺はその笑顔に見とれながら 彼女がもっと喜ぶ姿が見たいと願ってしまうんだ。
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