【パン屋の憂鬱】「プロローグ」

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時計を見ればもうすぐ14時。 お昼のピーク時にほとんど空になってしまった商品棚もこの時間になれば再び焼き上がりの時間を迎え、ほとんどの棚が焼きたてのパンで埋められている。 言わば、この時間は穴場的時間帯といってもいい。 この時間に訪れる常連客も多い。 焼きたてのパンも豊富で、昼休みの時間を過ぎて店の片隅にある喫茶コーナーの席も空いているからだ。 店内にいる客はゆったりと商品棚を見て回っている。 そんな彼らを見ながら今度は俺の眠気がピークになりかける。 俺はぼんやりとしながらショーウィンドウの外へ目をやった。 すると、頭の中を何かで射抜かれたように意識がはっきりとして目が冴える。 ガラスの向こうに…… 彼女を見つけたからだ。
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