【パン屋の憂鬱】「密かな想い」

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そんな俺たちを尻目に宮田さんは何かを思い出したように声のボリュームを上げた。 「あ、あるある。となりのビルの二階。確か法律相談事務所とかってガラスに書いてあるよ」 「そうそう、そこ。弁護士先生の秘書なんだって」 二人の話を聞きながら、俺もとなりのビルの外観を思い出す。 確かにビルの入り口にそんな看板があった。 「へえー。弁護士秘書かぁ……。なんか難しそう……」 宮田さんは予想外だったのか驚きを隠せない様子で呟いた。 しかし、それは俺も同じだった。 ほとんど毎日足を運んでくれるので、この近辺の会社であろうとは思っていたが、まさか、となりで、さらに弁護士事務所に勤めているとは思っていなかった。 「なんかすごいなぁ……」 感心する宮田さんとは逆に、俺は少し落胆する。
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