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彼女はすぐには返事をせずに店内の時計に目をやった。
「今日はあの……。平岡さん、とりあえずお店を出ましょうか。もう閉店の時間過ぎちゃってます。店長さん、すみません」
七時を五分ほど過ぎていた。
「いえ、大丈夫ですよ」
俺は食パン入りの袋を彼女に渡した。
「ありがとうございます」
彼女は頭を下げて受け取ると、店の出入り口に向かった。
そして、長身の彼を先に店から出すと、自分も表に出て店の引き戸を閉めるために振り返る。
ドアの隙間から彼女と視線が重なった。
『行かないで……』
テレパシーなんてものがあるなんて思わない。
だけど、この時、そう思わずにはいられなかった。
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