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『私も……』
俺が期待していた言葉を
彼女は口にしなかった。
「ありがとう」
その瞬間、本当に終わりなんだと思った。
「――くんにはきっと、私よりふさわしい人が現れると思うな」
俺はこの時ばかりは彼女を冷めた目で見つめた。
根拠のないありきたりな言葉で終わりにする彼女を許せなくも思った。
そして、俺はこの時、女っていう生き物の強さを思い知った。
彼女の言うとおり、彼女が俺を想っていてくれたのだとしたら、
【好きな男】であろうと、結婚のためならこんなにも容易く別れられるのだから。
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