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「こんにちは」
彼女はレジカウンターにいる宮田さんに挨拶しながら、調理場の俺に会釈をする。
この頃になるとそれももう日課のようなものだった。
俺にとっては待ち望んでしまうような。
彼女が背を向けてパンを選び始めたちょうどその時、パンが焼き上がる。
人気の高いたらもパンだ。
俺はオーブンから取り出した天板を少しも冷ますことなくそのまま天板を手にフロアに降りた。
天板の熱気だけで火傷をしそうだ。
店内が空いていたことも幸いし、俺は周りの客に注意しながらたらもパンの置き場に移動した。
それはつまり……
彼女の真後ろ。
たらもパンの置き場は彼女の目の前にあった。
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