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「平岡さん!? どうしたんですか?」
彼女が驚いた様子で彼に尋ねる。
俺はこの時、初めて目の前の男の名前を知った。
「ケータイ。デスクに忘れてたよ」
俺は無意識に彼の視線を追った。
彼女を見つめる視線には特別な感情が入り混じっていることは明白だった。
「え? 嘘!? すみません。全然気付いてませんでした……。すみません、電話してくださったんですね? 何かありましたか?」
彼女がスマホを受け取りながら聞くと、彼は俺の存在を気にしながら指先でおでこを掻いた。
「あ、いや、たいしたことじゃないんだけど……。僕ももうあがれそうだから、夕飯でも一緒にどうかな……と思って。電話してみたら向かいのデスクで電話が鳴るから慌てて飛び出して来たんだよ」
「よく……私がここだってわかりましたね?」
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