昔の彼女

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遠慮がちな声は囁くようにか弱かった。 「はい、もちろんです。いつもありがとうございます」 俺はその声を拾うために声の持ち主には一歩近付き、彼女からは一歩離れた。 そして、差し出されたトレイにたらもパンをのせた。 「私……、ここのパン大好きなんです」 以外にも、目の前の一見控えめな女性が話しかけてきた。 下ろした長いストレートヘアが印象的で、彼女の顔を全部隠してしまいそうだった。 けれど、彼女の顔には見覚えがある。 「ありがとうございます。週に何回か来てくださってますよね?」 「……え? あ、はいっ! 気付いて下さってたんですか……?」 大人しかった彼女の声が急に華やいだ。
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