昔の彼女

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俺は面喰った。 もういつもの調子で会釈をする準備をしていたからだ。 けれど、彼女から目を逸らされてしまい硬くなった首をゆっくりともたげて生地をこねる手元に視線を落とした。 彼女はそのままガラス戸を閉めるときにも俺へ視線を上げてはくれなかった。 俺は小さなため息をつく。 ……何を期待してたんだろう。 こんな日だってある。 むしろ、こっちの方が普通なんだ。 そう自分に言い聞かせて手を動かす。 すると、霧島さんの次に精算を終えた彼女がパンの袋を手にしてこちらを見ていた。 彼女ははにかんだ笑顔で俺に会釈をした。 俺はぼんやりとしながらもなんとか笑顔をつくり、彼女に会釈を返し、後ろのオーブンを見るために彼女に背を向けた。
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