彼女と彼ら

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……彼氏……? 一瞬、耳を疑う。 聞き間違いかと思ったが、なぜかそのフレーズだけはっきりと耳に残っていた。 霧島さんの彼氏は……弁護士……? 霧島さんの…… 彼女…… 彼氏がいるのか……? 頬の筋肉が上手く動かなくなった。 「……変わるよ」 俺は隣のフライヤーでカレーパンを揚げていた男性スタッフに声を掛け、立ち位置を代わった。 フロアでは彼女と二人の男が何やら話しているが、もう耳には入ってこない。 俺の耳には油のパチパチと弾ける音だけが妙に大きく聞こえてくる。 いつもと変わらない自分……。 そのはずが、橋本さんが俺を見つめていた。 「な、何……?」 彼女は少しの間を置いて目を逸らした。 「いえ、別に……」
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