彼女と彼ら

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翌日は木曜で定休日。 休みの日には新作の試作のために店に出向くことの方が多いが この日は店には足を向けなかった。 身が入らない……っていうんだろうか。 今までこんなこと、一度もなかったのに。 店をオープンさせて一度も。 ……公私混同もいいとこだ。 お客さんのために新しいパンを作ろうと思うのに、 身体が動かない。 俺は思い知らされる。 最近の俺は…… お客さんそっちのけで 彼女のことばかり考えていたんだって。 こんなんじゃ店長失格だよ……。 俺はベッドに腰掛けながらおもむろに携帯を取り出した。 悩んだときにはいつも助けてもらってる。 あの人ならこんなどうしようもない俺を叱ってくれるんじゃないかと思った。 そして、俺は画面上にその人物の番号を呼び出し、電話を掛けた。
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