彼女を想う時

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一日の終わりの片付けを始め、ゴミを捨てようと裏口から店の裏に出た時だった。 ちょうど、角を曲がった彼女が俺に驚いて小さな声をあげて立ち止った。 「あ、霧島さん」 「どうも……こんにちは。あ、『こんばんは』でしょうか」 久しぶりに近くで顔を合わせることが出来ると、俺の中には安堵にも似た穏やかな空気が漂った。 「そうですね。こんばんは」 俺は自分が両腕いっぱいにゴミを抱えていたことも忘れて微笑み返した。 小さな会釈をした時に自分が抱えていたゴミが邪魔になり、俺は自分の手元に目をやり、クスリと笑った。 「なんか僕、霧島さんと会うときほとんどゴミと一緒ですね。すみません、服もいつも汚れてて」 「そんなことないです。もうすぐ閉店ですもんね」 彼女がそう言って目を留めた俺のエプロンは、所々白い粉で汚れていた。
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