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「あ、店長なら奥で電話中ですよ」
宮田さんが思い切り口角を上げて教えてくれた。
「あ、別にそういうわけじゃ……」
私は細かく首を横に振るけれど、宮田さんの表情はそのままだった。
そして、橋本さんから甘口のカレーパンを自分のトレイにもらい、店内を回ろうとすると、背後で再び宮田さんの声がした。
「あ、店長」
その声に反射的に……とは言わないまでも、思わず振り返ってしまった。
「愛しの彼女が来てますよ~」
見れば、宮田さんの口元は先程よりも横に広がっている。
その瞬間、彼と目が合った。
店中に聞こえてしまいそうな宮田さんの声に、私は真っ赤になった頬を片手で何とか隠しながら彼に苦笑いを向けた。
「声が大きいよ。それに、毎回からかうのもやめなさい」
彼は定位置であるオーブンの前に着きながら言った。
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