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しばらくして裏口が開くと、中から残っていたスタッフが顔を出した。
彼らはどこか気まずそうに私に会釈をすると、
「さようなら」と、私の前を通り過ぎた。
私も申訳なくなりながら「さようなら」と、頭を下げた。
これで店内には彼ひとり……
帰宅する彼らの背中から裏口のドアへ視線を移すと、再びドアが開いた。
「ごめん。お待たせ」
私が小さく首を振ると、彼は「中に入る?」とドアからもれるオレンジ色の明かりの先を振り返った。
私は少しだけ考えて、
「そこにしませんか?」と彼の足元を指さした。
「オッケー」
彼は裏口の小さな庇(ヒサシ)の下のコンクリートに私のスペースを残して座った。
私は静かに彼に近付き、隣に腰を下ろした。
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