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夜空に浮かぶ、白い満月。
こういう夜は、毎度どうにも落ち着かなくなる。
「まぐまぐ……」
まん丸の月に、ひとりごちてみた。
茶屋で求めた団子を頬張り月見団子と洒落てみても、煩悩の犬は追えども去らず。
「まぐまぐ……したい……」
満月を見ていると、ソノ気になるのはなぜだろう?
「ーーなによ、マグマグって」
いきなり背後から掛かった声に、団子を持つオイラの手が止まった。
「…………いつ湧いて出たんですか」
冷めた視線を後ろに流すと、そこには薄紅色の短着物姿……見た目は五、六歳の可愛らしい幼女。
オイラと同じ団子を持って、もぐもぐと口を動かしている。
「いつって、さっき九兵衛が立ち寄った峠の茶屋からずっと後ろに居たよ。それよりマグマグって?」
「わかっててとぼけてるでしょ、ヤミー」
「うん。どうせまた『まぐわい』の隠語でしょ? しょーもな」
オイラの繊細な欲求をケン、ケン、パ♪で踏みにじり、彼女は食べ終わった団子の串をピンと飛ばして前に回り込んで来た。
「したけりゃ好きなだけすれば? 相手が要るならいくらでも用立てるよ、ほら」
ヤミーが両腕を広げた途端、彼女の背後にザワッといくつもの黒い影が湧き上がり、それが徐々に女人の姿をかたどっていく。
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