待たされ九兵衛

3/19
前へ
/20ページ
次へ
「この子たちはアタシの配下の者だから害は無し。どれでもどうぞ!」 「……魔物はイヤだ」  オイラが涙目でつぶやくと、ヤミーは大きな目をパチパチと瞬かせた。 「なんでよ。こっちの口女なんか、かなりのべっぴんさんでしょ。そっちのろくろ首はパーフェクトボディだし」 「普通の人間の女の子がいい。ブスでもデブでも人間ならなんでもいい」 「もー、それはマズイって。この前はアタシが紹介したネコ娘を気に入って、ニャンニャン……」 「それは前の隠語。その時わかったんです。魔物は……ちょっと、やっぱり違う……」 「なにが違うの?」  興味津々を顔一杯に溢れさせて、ヤミーが覗き込んでくる。 「……言えません。とにかくなんというか、微妙に……一気に萎えて閉店ガラガラでした」  ふう、と月に向かってため息一つ。  なんでこんな事になったのか。  このため息は、欲求が満たされないだけの嘆きではないのだ。 「うっそ! 魔物でもヒトガタなら同じだと思ってた。ねえねえドコがどう違うの?」 「言えないっての」 「………………」 「コラ。おのれの着物をまくるんじゃない。自分のを確認しようとするんじゃない」  オイラが咎めると、ヤミーはキョトンとして裾を持つ手を止めた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加