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「佑都...」
恵実は俺の頬にそっと触れる
その表情は、普段の明るく、そして元気さを見せるものはどこにもなく
寂しげに、薄っすらと涙を見せていた
「ごめんね、間に合わなかった」
恵実はそっと俺の腹の傷に触れる...すると痛みは消え、傷はあふれ出ていた血ごと消失していた
恵実は俺を背負う、普段からは考えられない怪力だ
「佑都はね、もう助からないの。あのナイフは、そういう代物なの」
恵実は、俺を背負いながらそう語る。傷は消え痛みもなくなったのに、意識が遠のいていく
恵実の言っていることは本当なのだろう、なんとなくだが自分に死が近づいているのがわかる
「佑都がどうして狙われたのか。簡単に言ってしまえば佑都と一緒にいるあたしを誘き出して、あたしを殺すつもりだったんだろうけど...何をどうしたらあたしを殺せると思っていたんだろうね、あの天使は」
天使...?
比喩か何かかと思っていたが女と恵実のやり取りからあの女が天使でも不思議はないと思い始めてきた
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