夜のかき氷大会

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「大丈夫ですよ、アナタの想像とは違いますから」 ギクッとして顔を上げると、社長は正面に座りゆっくりと話し出した。 「色んな噂がありますが、掟に背いた者は異世界の牢獄のような場所に連行されます」 ただ能力も奪われ一生出れず、実質消されると同じ意味合いだが、この事実は監視役と社長と掟を破った本人しか知らないらしい。 殺されると思っていたが、違う所に移されるのも内容によっては地獄かもしれない。 「私も『白』と判断され応援要請が真っ先に入りましたが、情報は一瞬で伝わりますし監視役のメンバーも数名しか知りません」 監視役が誰かなんて見当もつかないが、メンバーについて気になる事が一つある。 タイミング良く現れサプリを渡してくれた啄と、あの部屋の去り際に、チラッと見えた気がする木村さんの姿。 いつも受付で見ているし、ウチにもドラム缶体型の住人が居るので、目についたのかもしれない。 「質問にはお答え出来ませんよ?今日見た事や聞いた事は、誰にも口外せず胸にしまい、墓場まで持って行って下さい」 「……分かりました」 社長はいつものキツネ面に戻ったかと思うと、口調も小憎たらしい感じで毎度の調子に戻った。 「紫苑も刺繍の色で判断して失敗したよねぇ、まぁ無色のつなぎの新人が化け物級の強さで、般若に変身するとは思わないだろうけどさぁ」 「だから……般若じゃないんですけど」 静かに睨みを利かせると社長は立ち上がって小走りに逃げ、新人と遊べる日をチェックしておこうと受付に向かった。 「社長、ハードな任務の日は極力避けて下さいね!」 後を追う私を振り返るとキツネ面……いや社長は、ニヤッと笑いスキップをしていた。 『この人についていけないってゆうの、分かる気がする……』 本当はかなり怖い人だとしても、何となく憎めないのがイザリ屋九十九代目のいい所かもしれないと心で思った。 (完)小麦イザリ屋帳②へ
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