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リュックからライトを出し、被っているキャップに装着するか、照らさないと歩けない位真っ暗な場所をよく歩く。
時代も様々である時は着物を来た者が居たり、別日は私達と変わらない格好の世界だったりもする。
執行役は現地で依頼人から最終的な標的の場所だけ聞いて別れ、ここからが仕事の始まりとなる。
この日も田んぼ近くの土の道を歩いていたが、たまに振り返ったり周りを見ても、違和感を突き止める事は出来なかった。
『おかしいな、なんだろこの感じ』
行ってる世界もやってる事も普通ではないので仕方ないが、視線を感じるのは初めてだった。
任務は極秘で進められているし、敵に漏れた事は私がいるチームでは一回もなく、応援に行った時も同じだった。
みんな普段と変わらないし勘違いかもしれないが、気になりだしたら集中が切れそうだし、万が一当たっていれば命の危険もある。
「あの、リーダー」
こそっと呟くように呼び止めると、どうしたと少し足を止め、耳だけこちらを向けている。
「ここに来た時から、誰かに見られてる感じがするんですけど……」
勘違いだろと言われると思っていたのに、急に顔色が変わったように見え、救護の啄の表情も強張っていた。
会話してるように見せかけ二手に別れて散ると合図されると、私は瑠里とリーダーは救護の啄とペアになり、三歩進むと勢いよく別方向に走り出した。
見られてるって誰にと瑠里に聞かれたが、私も視線を感じたレベルなので、上手く答える事が出来ない。
途中で急に瑠里が向きを変え、リーダー達が走った方向に猛ダッシュするので慌てて追いかけた。
「瑠里――っ、待って!」
着ているつなぎや運動靴や黒いキャップは、見た目だけでいうと整備工場の人だけど、きちんと意味がある。
つなぎは防御性に優れていて通気性も抜群だし、靴はジャンプ力や走る速さがかなり上がり、キャップは……まだよく分からない。
とにかく普通の数倍の速さで無言でダッシュされると、追いつくのに苦労する。
瑠里はリーダー達の姿を捉えた様子で、稲膜を誰かに向け大きく広げていた。
稲膜は敵から防御する透明のバリアみたいなもので、妹のはズバ抜けて分厚く俊敏性もある。
瑠里の姿を見つけ稲膜の先を見ると、ツタのよう物で足を巻かれている啄をガードしていた。
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