夜のかき氷大会

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『どうしよう!?』 誰にも話せないし必死にシャクシャクと氷を突きながら考えたが、双棒を持ってないとただのか弱い女子だ。 気付かれて刃物で刺されたりなんかしたらすぐに死んでしまうし、腕力もないので太刀打ち出来ない。 しかもまだ誰だかハッキリしてないので、目が合って動揺してしまったらと思うと身震いしそうだ。 『瑠里――っ、ヘルプミ――!』 心で叫んだ後に慌てて『いや、やっぱナシ』と訂正をかけた。 妹に助けを求めて逆に巻き込んでしまうとマズいし、素知らぬ顔で部屋を出るのが安全な気がする。 切羽詰まった状態で目を閉じシュミレーションをしていると、聞き慣れた声が頭の上から降ってきた。 「せっかくのかき氷を、そんな食べ方したらマズくなるだろ?」 別室に行った筈の啄が、苺味に練乳をかけた女子好みな組み合わせのカップを手にしている。 『お前らボンクラ親族は何をしてるんだ!敵が恐らく傍にいるのに!』 苛立ちを覚え睨みを利かせると、先輩に向かってその目つきはなんだと、呑気に文句を言っている。 おかげで何とか顔を上げる事が出来たので『ボンレスあの人だかりは』と声に出していた。 「誰がボンレスだ!レベル高い奴らの集まりだし、双棒の新作見てんじゃない?俺ならサプリとして服用とか画期的なアイテムを作るけどな」 救護役で毒薬バカの啄は、その腕を活かして色んな薬を独自に開発しているので、夢は健康関連のサプリ工場を作りたいと聞いた事がある。 「もしかしてそのサプリもう出来てる?」 「誰に言ってんだ?当然だろ、俺は天才なんだよ」 「なら一粒よこせ」 ブツブツ文句を言う啄から無理矢理むしり取ると、ジュース状になってるかき氷でゴクッと飲んだ。 「ちょっ、まだ実験してな……」 完成しようがしてまいが気休めにはなるし、明日お腹を下したりする事より、今が最大のピンチだ。 カップを捨て部屋からこっそりと出よう試みたが、ドア付近であの気配を感じていた。 『バレてるよね、私の事』 普通の表情を保ちつつドアに向かって歩くと、見た事もない男性が、行く手を阻むように目の前で立ち止まった。
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