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「ここの食べ物を食べたら、太一は向こう側に帰れなくなるから……!!
太一は、まだ、帰れるから……っ!!」
「エリカ、どういうこと?
訳が分からないよ……
落ち着いて、僕にも分かるように……」
「……太一、私達、死んだのよ。
海に行こうって、二人で出掛けて……私達の車、後ろから別の車に追突されて……二人とも、車に乗ったまま、海際の堤防から落っこちて……」
気にしないようにしていた違和感が、どんどん僕の胸の中で大きくなる。
だって、おかしいんだ。
いつも僕の手首を掴んで走り回っていたエリカが僕を捕まえようとしないことも、ここまでしつこく逃げ回るのも。
もう今年は終わったはずの夏祭りを、こうして二人で楽しんでいることも。
「でもね、私はもうダメだけど、太一はまだ、かろうじて生き返ることができるんだって。
ここのお祭に来ている人達が教えてくれた。
だから、今の内にこちら側の世界にくくりつけておかなきゃいけないって。
死後の世界の食べ物を食べさせてしまえば、たとえ向こうの体が生きていたって帰れないからって。
でも、でも……!!」
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