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エリカは僕の胸にすがったまま顔を上げた。
エリカは、泣きながら笑っていた。
瞳は次々と涙をあふれさせるのに、口元は必死に笑みの形を作り出そうとしていた。
「……できないよ。太一には、生きていてほしいもん」
「……エリカ」
「離れるのは、イヤだよ。
でも、太一が死んじゃうのはもっとイヤ……!!」
エリカの叫びを聞いた僕の体は勝手に動き出す。
だけどエリカが動く方がわずかに早かった。
石の上に置いてあった食べ物を薙ぎ払って地面に落としたエリカは、綺麗な下駄を汚しながら必死に食べ物を踏み潰す。
決して僕が口に入れられないように。
「エリカっ!!」
「イヤだもんっ!! イヤなんだもんっ!! 私のワガママで太一を殺すのはイヤッ!!」
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