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ラムネ瓶が割れてエリカの白い足に朱色の線が走る。
それでもエリカは足を止めようとはしなかった。
「私が海に行きたいって駄々をこねなければ……!!
太一が忙しいって知ってたのにっ!!
太一は別の日にしようって言っていたのにっ!!」
僕は暴れるエリカを後ろから無理矢理抱きしめる。
跳ねるかんざしの鎖細工が僕の頬を叩くことに気付いたのか、エリカは暴れる足を止めた。
代わりに小さな手が、うなだれた顔を覆い隠す。
「こんなことになるなんて、思っていなかったんだもん……」
ポツリと、その隙間から声がこぼれた。
「ずっと一緒にいられるって、思ってたんだもん」
「うん」
「ずっとずっと、おじいちゃんとおばあちゃんになるまで、毎年一緒に夏祭りに行けるって、思っていたんだもん……っ!!」
「うん」
ギュッと、エリカを抱きしめる腕に力を込める。
ここに流れる時間ごと、エリカを抱き包めるように。
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