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「エリカ! 待てよ、はぐれるだろっ!?」
紺地の浴衣に鮮やかな赤色の金魚帯。
夜気という水の中に踊る金魚のような彼女の手を慌てて取る。
少し強めに引き戻すと、彼女は嬉しそうな顔で振り返った。
結い上げた髪に差し込まれたかんざしの小鈴がシャリンと涼やかな音を響かせる。
「大丈夫だよぉ、太一がこのお祭で私を見失ったことなんて一度もないじゃん」
「そりゃあさ、この歳になってまで恥ずかしげもなく金魚帯を締めてくるなんてお前くらいしかいないから、見失いようもないけどさ」
「何よぉ、カワイイでしょ?」
そう言ってエリカはプクッと頬を膨らませる。
だがそのふくれっ面はすぐにはじけるような笑顔に変わった。
「あ! かき氷売ってるっ!!」
「ちょっ!? だからエリカッ!!」
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