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駆け出したエリカの手がスルリと僕の手からすり抜ける。
僕はヒラリヒラリと揺れる金魚帯の軌跡を追いかけて走り始めた。
エリカは昔からこうだった。
それこそ、幼稚園の時から。
エリカは何にも縛られない。
そんな風みたいに自由な所に僕は惹かれた。
エリカに言わせれば『私だって太一に合わせるべき所は合わせてますぅ』ということらしいが、その発言には友人一同も合わせて首を傾げいている。
「……はぁ、喉乾いた………」
現に僕は、散々走り回されてゲンナリしていた。
いくらエリカのこういう所に惚れたと言っても、度が過ぎれば怒りも湧く。
僕は逃げるエリカを放置して、しばらく一人で祭を楽しむことにした。
だって、楽しまなきゃ損じゃないか。
わざわざこうして浴衣まで着こんで夏祭りに来ているんだから。
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