宵闇金魚

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「そういうことなんです、親父さん。  カノジョ捕まえてから一緒に楽しむことにします」 「あ、ちょっとお兄さんっ!?」  人混みの中から手招きするかのように金魚帯が揺れている。  僕はいくつもかけられる屋台の主からの声を振り切って人混みの中を進み続けた。  だが、目指していた金魚帯がフッと人混みの中からかき消える。 「……エリカ?」  足を止めて、周囲を見回す。  屋台の列から外れた、神社の境内。  濃い闇の中にはポツリポツリと、まるで僕を導くかのように提灯がともされている。  ふと、僕は幼い日の事を思い出した。  その思い出をたどるように、僕は境内を進んでいく。
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