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まだ僕が幼稚園に通っていた頃、迷い込んだ夏祭りの神社の中。
僕は一人きりでも楽しかったけれど、同じように家族とはぐれてしまった彼女は、境内の隅で泣いていた。
紺地の浴衣に赤い金魚帯の少女とは、このお祭で出会って友人となり、時を重ねて恋人になった。
初めて出会った夏祭りからずっと、毎年一緒にこのお祭を楽しんできた。
「……その金魚帯、あの時僕が可愛いねって褒めたから、ずっと使っていてくれるの?」
正面の拝殿からぐるりと回り込んだ左側、ちょっとした庭になっている広場の石の上に、彼女はチョコンと腰かけていた。
その傍らには、とても彼女一人では食べきれない量の食べ物の山がある。
いつもそうなんだ。
何だかんだと言いながら、エリカは必ず僕が食べる分を確保しておいてくれる。
縛られはしなけれど、決して周囲を見ていない訳でも、軽んじている訳でもない。
そんなエリカに、僕は恋をした。
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