1 囁きピアス

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――めちゃ可愛い!  白い猫が、通りの植込みの前にちょこんと座っていた。猫は顔を上げて、神秘的な瞳で翔太を見た。  翔太は思わず近づいた。猫の背中にピンクのハートの模様があった。  抱き上げようと思って近づく。金目・銀目のオッドアイだった。猫は立ち上がり、翔太を見上げてニャーと鳴き、尻尾を振りながら歩き始めた。 ――ついてこいって言ってるみたいだ・・・。  翔太はあとについて歩き始めた。夕方で、沢山の人が道を歩いていた。猫は人の流れの中を歩いて行ったが、翔太以外、誰も猫を見なかった。 ピンクのハートの模様のある猫が歩いていたら、たくさんの人が気付いて大騒ぎになってもおかしくはないのに。  あとを追う翔太は不思議に思った。  猫は路地に入り、坂を上り、”魔訶不思議雑貨屋 Magical Items”という看板のかかった雑貨屋の前で止まり、見返りのポーズで、あとからついてきた翔太を見た。 近寄ると、猫は雑貨屋のドアについている猫用の出入り口をくぐりはじめた。翔太もあとを追って、店のドアを開けて中に入った。  
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