第2章 サングリア

6/10

219人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
 しばらくすると、赤ワインを持った前島先生が戻ってきたので、立ち入った話はそこで自然にストップした。 先生は手慣れた様子で栓を開け、デキャンタした。 それを秀蔵先生がグラスに注いでくれる。 淀みのないその動きに、俺はうっとりとする。  赤ワインを満たしたグラスを光に透かせると、事務所内が美しく映る。 「……改めて息子をよろしくお願いします。どうか、守ってやってください」  世界の巨匠に心から深々とお辞儀されると、本当に恐縮してしまう。 「いえいえ、こちらこそ。今日は本当にありがとうございます! 息子さん、祐くん、守りますよ!」 大事にします、守りますって、何だよ。大げさだなぁ。結婚じゃないんだから。 何を言わせるんだ、オッサン。 「改めまして、乾杯!」
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

219人が本棚に入れています
本棚に追加