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美弥子と馬鹿話
風呂も終え、特に考えもなく過ごしていたところに、ふと神社へ行きたくなった。古くからの建物で、よく集まっては遊び場にしていた。せっかくだ、行ってみようと思い外へ出る。
高層建設物がないのと自然が豊かなおかげで外に出ても涼しかった。夜は夜でいい眺めだなと思いながら神社へ向かう。
山道を登り、階段を登り。見えてきた神社にふと人影があった。足音で気がついたのか、人影はこちらへ視線を向ける。暗くてわからないが、シルエット的には女性……のようだ。
「わっ、こんな時間にこんなところへ来る人なんて珍しいですね。……あれ、ゆうくん?」
人影が声をかけてきた。ゆうくん? 確かに昔はそう呼ばれていたが……。目が徐々に慣れてきたのか人影が色を帯びてきた。眼鏡を掛けたポニーテールの女性。その顔に面影がある。
「美弥子……なのか?」
その言葉に対し嬉しそうに反応する。
「やっぱりゆうくんだ! 元気そうでよかったよ。あれから何年だっけ、十年くらい?」
「そうだな。大体十年くらいだ。俺が家を飛び出してからそれくらい経ったのか。時間ってのも早いものだな」
しみじみと言ってしまえばおっさんくさい。しかしまぁもうすぐおじさんと呼ばれる歳になってしまうのも悲しいところだ。
「何よー、おっさんくさいこと言っちゃって。それより、琥珀には会ったんでしょ? 最近、と言うかここ数年ですごい曰くじみてるんだけど、聞く?」
にやりと笑いながら夏の風物詩を語るような面持ちで話そうとする。――――曰くじみている。どこまで本気なのかわからない。
「何だそれは。まぁ、馬鹿話だと思って聞いてやるよ」
そう言うと少し真面目な顔で話し始める。
「実は――――」
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