1.怪盗ポラリスは幼馴染みに油断している。

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 あとには静寂が残ると思いきや、周囲は予想以上に騒がしかった。どうやら壁の内側から聞こえてくるようだった。 「それにしてもでかい壁だね」 「ああ、そうだな」  バスを降りたの人に二人はついていく。壁沿いにしばらく歩くと、厳つい警備員が二人いるゲートに到着した。どうやらそこで手荷物検査をしているようだった。よく空港なんかに置いてある金属探知機もある。 「おいおい、大丈夫なのか?」 「今日だけ解放していて、見物客を装って入場できるだけまだまし。というか、結構人がいるみたいだから、そこまで深く手荷物検査とかやらないでしょ。というか、理数は『日雇いの警備員です』って言えば普通に入れるじゃん……」  萌衣は疲れた顔でそう言った。 「遅刻じゃないよな……」  理数が腕時計をチラッと見ると、短針が七のところを、長針が十二のところを指していた。そして、ボーン、ボーンと鐘が周囲に鳴り響く。 「理数? そのうるさい鐘の音を止めてくれない。うざいんだけど」 「いやさ、腕時計があんなでかい音を奏でると思うか? 違うだろ。つまり僕は悪くない」  萌衣の言葉を真に受けて反論する理数。そんな理数を見て、萌衣は呆れたようにため息をついた。 「何を言ってるの、冗談に決まってるじゃない。というわけで、あたしは準備があるのでそれじゃあ」 「えっ、先に中に入るんじゃないのかよ」 「初の別行動だよ! せいぜい捕まらないように頑張ってね!」  萌衣がそう言いながら、USBメモリーを渡す。 「この中にエライちゃんがいるんだよな」 「そうそう。それじゃあ、健闘を……祈らない」 「ああ、萌衣もな……って祈らないのかよ!」  理数が突っ込みを入れる前に、萌衣はゲートに並ぶ列を抜け出しどこかに走り去ってしまった。しかし、十メートルも走らないうちに萌衣が盛大に転ぶ。  本物に大丈夫なのだろうか。  理数は始まる前から不安になった。
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