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「エライちゃん、どうだ?」
『ここじゃあ無理だ、です。本館の方にシステム管理ルームがあるので、そこに行け、です』
「お、おう。システム管理ルームだな」
どうやらここのネットワークは本館からは独立しているようだ。予想してはいたが、理数は思わず舌打ちをしてしまった。
USBを素早く抜き取り、上着のポケットに入れる。
そして、理数はガチャリと再び扉を開けて、外に出た。
「頑張れよ」
先ほどの警備員が理数に向かって敬礼をする。おい、手荷物検査の手が止まってるぞ、とはさすがに言えなかった。
本館までの道はブルーシートをひいて場所取りをしている人が多かった。
花火とか花見じゃないんだからよ。
第一ここは北飛家の持つ私有地じゃなかったのかよ。
理数は心の中でそう突っ込みながら、巡回中なのかすれ違う警備員に会釈する。
上空には先ほどまでいなかったヘリコプターが現れ、本館をライトで照らしている。色的にきっと報道関係のヘリコプターなのだろう。
敷地内の警備は元々厳重だったが、本館に近づくにつれて巡回している警官や警備員の数が多くなる。恐らく見物客が増えてきているからだろう。巡回をしている警官を横目に、理数は迷わず本館へと進む。
関係者以外立ち入り禁止のロープをくぐり抜けて、人が疎らになった本館へと続く道へ立つ。警備員の格好をしているからか、誰も疑いの目を向けてこない。逆に怪しまれたら困る。
かなり大きく三階建ての迫力のある洋館風の本館。
木製のがっしりとした印象の扉。
遠くからは見えてはいたものの、目の前で見ると迫力が全く違い、ほーっ理数はと感心した。
門番的な役割をしていたのは、優しそうな顔をした細い体つきのお兄さんだった。
こんな重要な場所で立っているという事は……。
気のせいか冷や汗が出てきた。
だが、理数は堂々とお兄さんに近づいた。さすがに警備員の格好をしているので怪しみはしない。
先手必勝。
理数は自分から仕掛けることにした。
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