1.怪盗ポラリスは幼馴染みに油断している。

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「まあそれはいいんだけどさ、私のうちに来て探し物の」 「断る!」  床にあぐらをかき、腕を組みながら不機嫌そうに理数が即答した。 「じゃあ……」  萌衣が天井を見上げながら何かを考え込む。そして、何かを思い付いたのかポンと手を叩いた。 「手伝いをしてくれたら、私の手作り料理を振る舞ってあげるよ」  それを聞いた理数の目が大きく見開かれる。その反応に萌衣は思わず小躍りしそうになったが、理数が驚いたのは彼女の予想とは逆だった。 「萌衣って料理出来たっけ?」 「それは女の子に言っちゃダメなせりふだよ!」  萌衣が不満そうにぷくーと頬を膨らませる。  しかし、萌衣の料理の腕は絶望的に下手なのである。否、下手という次元ではない。食べられそうな物が出来ればまだましな方で、食べられる材料しか使っていないはずなのに、人外の――人害の物が出来上がる。その場合は料理の見た目からしてもうダメなのだ。  理数は萌衣が過去に作った料理の数々を思い出し、顔をしかめた。  ……嫌な記憶しかなかった。 「わかったわかった。手伝うから料理は作らなくて良い」  理数が両手を挙げて降参する。 「ありがとう、りす。……あれ? 料理を作らなくて良いってどういうこと?」 「まあそのあれだ、僕らの間に貸し借りは無しってことだ」  苦し紛れに理数は誤魔化す。萌衣はしばらく疑いの視線を送っていたが、「りすりすが手伝ってくれるならいいか」と呟いた。どうやら納得したようだ。 「次その名前で呼んだら、手伝ってやらないからな」  脅すような口調で理数が萌衣を睨み付ける。 「じょ、冗談だって」  怯えるような顔で萌衣は後退りした。  否、ドン引きした。 「それで探し物ってのは一体何なんだよ?」  玄関で百均製の真っ赤なサンダルを履きながら理数が尋ねる。 「あれだよ、あれ」  萌衣が何かを思い出したそうに理数から顔を逸らして、空中を切るように手を振る。 「あれじゃわからないけど、まあ思い出したら言ってくれよ」  ガチャリ。  理数が鍵を回して玄関の扉を開ける。  それと同時にギラギラと凶悪な日差しが降り注いだ。
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