1.怪盗ポラリスは幼馴染みに油断している。

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「と、溶ける……」  五月と言えど太陽光は強力だった。地球から億キロ単位で離れていると疑いそうなほど日差しは強かった。  二人はすぐ隣の猫星家の玄関先へ逃げるようにと避難する。避難というか、そこが目的地だった。 「お邪魔しまーす」  サンダルを脱ぎ、何の物音もしない家の中へと上がる。恐らく誰もいないのだろう。玄関から見えるリビングの電気は消えていた。  二人はリビングを通り抜けて、勾配が急な階段を上がる。  階段は毎度のことながら設計ミスなのではないかと思うほど急だった。上るのはまだ良い方で降りるのは相当怖い。  萌衣はさすがに毎日使って慣れているからか、呑気に鼻歌を口ずさみながら階段を上がっていく。 「あ、上はあたしが探すから、理数は一階を探してくれない?」 「ああ、わかった……って、何を探すんだよ」  ちょうどタイミング悪く、ガチャンと扉の閉まる音がした。 (全く何を探すのか分かっていないのに探せって無理ゲーもいいとこだろ……)  家に入って一分もしないうちに理数は不満タラタラだった。取り敢えず電気でも付けるかと思い、壁に埋め込まれているスイッチをパチンと押した。 (電気つかねぇじゃん)  そう呟くと同時に、ゴゴゴゴと背後で何かが動く――そんな音がした。理数は勢いよく振り向く。  すると、階段の下の部分――土台がゆっくりと開き、真っ暗な空間が現れた。階段室のようにしか見えないが、室内のすべてが現れると、普通ではないことが一目瞭然だった。  そこには、更に下へと続く階段があったのだ。 こんなところに階段なんてあったのか。  それ以前にこの家に地下なんてあったのか理数は思い出せなかった。  そもそも最後にこの家に上がったのはいつだっただろうか。  それすらもあやふやだった。  いつもは立場が逆なのだ。理数の家に萌衣が来て、そこでゴロゴロする。そうなると、理数は家の外に出ることはない。 (取り敢えず懐中電灯がいるな、こりゃ)  男は皆冒険とか探検とかそういった類いの物が大好きなのだ。だからか理数はどこかウキウキしていた。  近くにあった棚の引き出しに懐中電灯が入っていたので、きちんと付くか確認して理数はそれを拝借した。探し物を探しているのだから懐中電灯くらい大丈夫だろう。理数はそう思った。
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