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カチッと懐中電灯のスイッチをオンにして、理数は真っ暗な階段へと足を掛けた。
一筋の懐中電灯から伸びる光が、闇を切り裂くように二、三段下の段を照らす。
カツカツカツと一階分くらい降りると理数の目の前に厳重そうな鉄の扉が見えてきた。
『暗証番号を入力してください』
女声のアニメ声でモニターがそう告げる。
『暗証番号を入力してください』
そう言われても暗証番号など知らない。
理数がどうするべきかと思案していると、
ウー、ウー、ウー。
『侵入者発見! 侵入者発見!』
と警報音が派手に響き渡った。
ヤバイヤバイと思いつつ、理数は慌ててモニターに萌衣の誕生日を打ち込んだ。
もちろんダメ元で、だ。
『暗証番号を認証しました』
予想外にも暗証番号はあっていたようで、警報音は唐突に止まった。
理数はホッと胸を撫で下ろす。
と、目の前の重厚な金属製の扉がゆっくりと開き始めた。
(おいおい、これで異世界に繋がってるとかないよな……)
その扉は一般家庭にはないくらい異質で、本当に異世界に繋がっていると言われても信じてしまいそうだ。
ゴン、と扉が完全に開ききる。
中の光が眩しすぎて目が開けられないということはなく、むしろ室内は電気が消されて真っ暗だった。
理数がパチンと電気をつける。
LEDを使っていない時代遅れの蛍光灯が、ジジジッと不気味に光る。
室内に足を踏み入れると、室内は全面がコンクリートが剥き出しでとても無機質な空間が広がっていた。
何に使うのかわからないような高さ二メートル、横が一メートルくらいの黒い箱がいくつも整然と並んでいる。
心なしか肌寒いように思えて、理数はブルッと震えた。
視線を端っこに向ける。ハンガーにどこかで見たことのある衣装が掛かっていた。
「こ、これって……」
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