錆び付いている

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 声が聞こえる。誰かが私を呼んでいる。声に反応し、私は目を開ける。外は明るい。今日も晴れのようだ。晴れていようが私には関係ないのだが、多少気分の違いは出る。 「おはようございます、お嬢様。本日は少しお目覚めが悪いようですが、大丈夫ですか?」  目覚めなんていつも変わらないと思うのだが、声の主にはわかるのかも知れない。ただ単に起きるまでに時間がかかったくらいなのかも知れないが。無意味な思考よりも今は声の主に反応を示さなくては、余計な心配をするだろう。 「おはよう。体調はいつも通りです。心配はありません」  いつもこんな感じの答えしか言ってない気がする。事実だし、嘘をつく理由もない。声の主はいつも通りの微笑だ。表情を崩さないのは良くも悪くもわからない。崩したところも見たことがない。 「わかりました。では着替えが終わり次第食堂へ。朝食の準備が出来ております」  わかりました、と返事をする。声の主は一礼し部屋を出る。それを確認し、起き上がる。  体調は、良くも悪くもいつも通り。四肢の関節がキリキリと痛む。身体が錆びているようなイメージが浮かび上がる。血液という油が循環するまで、私は錆びた人形なのだ。だが、それでもいいと思っている。私は人形でいい。自我はいらない。出来ることなら、このまま朽ちていきたいのに、人間としての機能がそれを許さない。どうして私は生きているのか。生きているのではない、緩やかに死んでいるだけなのだと自身で結論付けたはず。
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