ちょっとした運命

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 時刻は九時一分前。運動が苦手な私にとっては大健闘したと言えるだろう。肩で息をしながら、目的の人物を探す。見つけるのは簡単だった。相変わらずいい意味で目立っているなと思いながら駆け寄る。向こうも気づいたのか声をかけてくる。 「はっはっは。遅れるかもしれないと言った割には時間通りだね。来て早々お疲れのようだけど大丈夫かい?」  かんらかんら笑いながら肩を叩いてくる。黒いロングに緑のワンピースにトートバッグ。知らない人が見たのならきっと清楚で大人しいイメージだろう。しかし彼女は真逆である。大らかで人当たりのいい人物である。しかししっかりと人を見てくるなんとも表現のしがたい性格である。 「はぁ……はぁ……あなたは、相変わらず早い、ですね」  ふぅ、と一息ついて呼吸を落ち着けさせる。その様子を実に面白そうに眺めてくる。そこまで面白い動作ではないと思うのだが。 「私はいつも早いからね。五分前行動は基本じゃないか。それより人前で息を乱すなんて珍しいよね。いつもは何事にも動じないイメージなんだけど」
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