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彼女が顔を向けた方を見る。あまりにも予想外だった。二人で出かけるのかと思っていただけに動揺を隠せない。顔を向けた方向に、年上と思われる男性が二人立っていた。
「ごめんね、ちょっと遅れたみたいだ。待ったでしょ」
声をかけられる。その声でふと我に返った。こうなったことは仕方がない、ここは彼女に付いていくしかないだろう。声をかけたのは金髪の、いかにも遊んでいるような軽い雰囲気の男性。その後ろには仏頂面のいかにも強引に連れられて来ましたと言わんばかりの男性。そもそも私は男性が苦手なのだが、彼女も知っているはずだ。まさか……と思い彼女を見る。
「ご名答、あんたが考えている通りの答えだと思うよ。せっかくの機会だし、あんたも少しは男に慣れておかないと、将来苦労するんじゃないかと思ってね。あぁちなみに、お互い初対面だから、どっち選んでも文句はないよ」
そういう問題ではない。しかし、こうなってしまった以上付き合うしかないだろう。諦めて彼女と共に行動するしかない。まったく話すことはなくとも、話を振らなければいいのだ。振られた話題に適当に反応するだけでいい。それなら楽だ。苦手とは言え、こちらから行動しなければいいのだ。色々と考えていると、金髪の男性が声をかけてきた。
「そろそろ行こうか。予定はあるの? ないのならこっちで予定は決めてあるんだけど」
ふと時計を見る。時刻は九時二十分。だいぶ時間が経っている。さすがにそろそろ出かけた方がいいだろう。お互いにそれを了承したのか、彼女が返答する。
「そうだね。予定と言う予定はないんだけど、今日は街を練り歩こうと思って。それにいきなりあの子を振り回すのも難しいと思うし。ね、沙希」
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