そして誰もいなかった

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 こういっちゃあなんだけど。  こうなって初めて俺は、俺としての人生という旅を自分の足で歩いているような気がする。  今日という日が終わりを告げる。  だが、明日は必ずやって来る。  俺の人生はまだまだ長い。  沈みゆく太陽の赤みが海の碧さに溶け込み、空が蒼く染まっていくのを見届けてから、俺は最近出来たばかりの唯一の仲間に向かって尋ねた。 「さぁ。明日はどこまで行こうか?」  腕の中の仔猫が小首を傾げたあと、東の方に鼻を向けてクンクンと嗅いだ後、一声鳴いた。
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