そして誰もいなかった

18/19
前へ
/19ページ
次へ
 ―――――――  ――――  真っ赤に染まる夕日が水平線に沈んでいく様を見つめながら、腕の中にある温もりを愛おしく思う。 「だから旅に出たんだ。お前と出会う為に。そして、これから新しい仲間達と出会う為にな」  頭を撫でると、「にゃー」と柔らかな声で鳴く。  あれから数十日。  いや、数カ月は経ったのかもしれない。  結局、未だに「人間」とは出会えてはいない。  けれど、コイツと出会えた。  この奇跡は、くじけそうになっていた俺の心に希望を与えてくれた。  一人じゃないってことが、こんなにも心強いことだなんて。  こんなにも癒されることだなんて。  一体、誰が想像しただろう。  大地を踏みしめ、真っ直ぐ歩いて行けば、必ず生きているものに出会える。  コイツと出会えたことで、萎えてしまった気持ちが復活したのも確かだ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加