~~ 2・カップルごっこ ~~

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~~ 2・カップルごっこ ~~

「矢川の家ってどこ?」  私と一緒に歩いていると、グラウンドにいた運動部の亮の友達が冷やかしてきたけど、そういうのには全く動じず笑顔でかわし、亮は普通に私に話し掛ける。まあ、動じないのは私のことを好きなわけじゃないからだけど。 「秋町」と、私は最寄り駅を答えた。 「そっか。じゃあ同じ方向だ。俺はもう少し先の霜月駅」  それから、亮は小学生の頃までは友達の過去も未来も見放題で、それを気をつけるようになったのが思春期を迎えた中学生になってからだったことや、間違って友達の過去や未来を見てしまうことが辛いことがある、なんて話をしてきた。  今までそういう話を出来る人がいなかったから、開放的になっている感じが伝わってきて、私はそんな亮を見ているのがなんだか嬉しかった。 「明日の朝も一緒に行こう。西田浩平の顔知らないだろ?教えるから」  秋町駅が近づいた時、亮がそう言った。思わず亮の感情に意識を向けてしまったけれど、その言葉以上の感情は感じられなかった。 「うん、いいよ」 「じゃあ、秋町のホームのベンチで待っているな」  駅に到着して、亮は笑顔で手を振ったから、私も笑って手を振って電車を降りた。  客観的には完全にカップルだなぁ・・・と思ったら、一人で赤面してしまった。感情が分かるのが亮の方じゃなくて良かった。だって、私は結構ドキドキしちゃっている。亮の方は単なる同類の仲間としか思っていないのが伝わるから、私も出来るだけそういう目で見ないようにとは思うのだけど・・・。  家に帰る途中に携帯メールをチェックすると、母から“今日はお父さんもお母さんも夕食はいりません”ってメールが来ていた。うちは両親が共働きだから、中学の頃から夕食を作るのは私の役目だった。私一人の夕食だったら、何か買って帰ろう。  次の日、秋町の改札で美樹が肩を叩いてきた。 「おはよう、茜。今日は晴れたね」  私は亮と待ち合わせしていたから、ちょっと気まずくて曖昧に笑った。 「どうかしたの?」  私の不自然な態度に気付いて、美樹が不思議そうに私の顔を覗き込んだ。
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