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「ちょっと、今日はホームで待ち合わせしているんだ」
「秋町のホームで?誰と?」
同じ中学から一緒の高校に進んだのは美樹と私の二人だけだったから、秋町から電車に乗るのも私達だけだった。美樹はますます不思議そうな顔をした。
「おはよう、友達?」
私が困った顔をしていると、亮がベンチから立って手を振った。
「うん。中学が一緒だった美樹。隣のクラスなの」
亮に美樹を紹介すると、美樹は一歩下がって驚いた表情をしたけれど、すぐに笑顔を作って亮に軽く会釈した。
「俺、茜のクラスメートの加賀見亮」
あ、茜って・・・?呼び捨て!?
私は驚いて目を見開いて亮を見た。その顔を見て、亮も少し照れた感情を見せた。
「茜って、呼んでもいいよな?」
なんて笑った顔にときめいてしまって自分で嫌だったけど、どうしようもなかった。しかも、兄にそっくりな人って・・・。やっぱり私って単にブラコンなのかもしれない。
「昨日あんなこと言っておいて、もう彼氏が出来ているじゃん」
美樹は冷やかすようにそう言って肘で私を突付くと、手を振ってホームの奥の方へ消えて行った。
「ちょっと呼び捨ては・・・やり過ぎじゃない?」
美樹が見えなくなると、私は亮に囁くように言った。
「苗字の方が不自然じゃん」
「・・・私は呼べないよ・・・」
恥ずかしくて絶対に無理。本当に付き合っているなら、頑張って呼んでもいいけど・・・。
亮は私の顔を見て笑った。どんな意味の笑いなのか、私にはよく分からなかった。
「加賀見君って、感情をコントロールするの上手だよね」
「おまえさ、プライバシーとか言いながら、そうやって覗こうとするの止めろよ」
可笑しそうに笑いながら亮はそう言って、自分はポケットに手を入れたまま私から少し距離を取っている。私のプライバシーは保ってくれているってことだよね・・・。
「ごめんね、気をつける」
私は素直に謝ったつもりだったけど、亮は急に真顔になって、少し怒ったような感情が流れてきたから驚いた。
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