85人が本棚に入れています
本棚に追加
昼休みになると、翔子と百合がお弁当を持って私の座っているところへ来た。
「具合はもういいの?」
翔子はそう言いながらも、心配よりも好奇心の感情が強かった。
「うん。いつもの貧血」
「あかねぇ。加賀見君、カッコ良かったよ」
お弁当を広げながら、百合が嬉しそうに笑って私を見た。
「茜が倒れたら、みんなが驚いている中、サッと抱きかかえてね」
ええ~っ!?亮が抱きかかえて保健室まで運んでくれたの?
私は顔が真っ赤になっていくのが分かった。
「加賀見君ってぇ、細くて可愛らしい男の子って感じだけど、やっぱり好きな子の前では男らしくなるのねぇ」
好きな子じゃなくて単なる責任感からだけど・・・そんなカッコイイ亮を見られなくて残念。
なんて考えてから気がついた。そういう亮を見るには、他の子を抱きかかえるということかもしれない。それはやっぱり嫌かも・・・。
「良かったね、茜」
百合が満面の笑みでそう言ったから、思わず私も笑顔で頷いてしまった。
いやいや、まるで本当に好き同士の彼氏みたいじゃない。違うとは言えないけど、本当は違うから複雑・・・。それで も、 やっぱり嬉しいものは嬉しいのだけど。
「で、昨日は化学室で、あいつは何て言ってきたの?」
翔子が興味本位丸出しで、冷やかしながら私の顔を覗き込んだ。
何も言われていないし。“付き合ったってことにしよう”って言われただけだから、 結局はカップルごっこの始まりという事だけど・・・そんなことは翔子には言えない。
「勿体無いから教えない」
そんな言葉で誤魔化してお弁当を広げようとした時、亮が私達の席に近寄ってきた。
「ちょっと茜、借りてもいい?」
亮が翔子と百合に声を掛けた。
「茜を連れて行くなら、茜のどこが好きか言ってからにして」
翔子が意地悪く笑って亮の顔を見た。百合もくすくすと笑っている。
「翔子ってば、何言っているの?」
最初のコメントを投稿しよう!